ときは巡る 僕らは変わる 一時だって姿を留めていられるものなんてないんだ 飛行機雲 「私、真弓くんがすき。」 彼女からの告白から三ヶ月。付き合い始めてからも三ヶ月。俺は今、最高に幸せ。毎日デートしてるわけじゃなく、毎日キスしてるわけでもないけど。毎日一緒に学校に行って、授業受けて、部活してまた家に帰る。付き合う前となんら変わらない日常が、彼女の告白でここまで変わってしまうなんて。気持ちが通じ合うってこういう事なのか、と。想うだけで心が温かくなる。 毎日の幸せが10%増えた感じ。それが、毎日続く。 「良い天気だなぁ。」 見渡す限り、畑と山。それと、空。 空は爽やかで、太陽の光が暖かかった。ちょっとのんびりしていた桜もやっと開花して、野道には菜の花とかオオイヌノフグリが咲いている。風が優しく吹いて、春の匂いを運んでくれた。 俺たちのデートには、ほとんどお金をかけない。お互いの家でごろごろしたり、散歩したり、それだって立派なデートだと思うから。 「東京じゃ、まだ桜咲いてないんだって。」 さっき通り過ぎた家の庭に咲いていた、桜を見て春華は言った。 「まじで?もうこんな暖かいのに?」 「東京は此処より北だからまだ寒いんでしょ。」 「そっか。此処はこんなに暖かいのになー。」 今日は暖かい。春らしくセンスが良い服装に、長いさらさらの黒髪。そして、白い肌。話し方は御世辞でも、ふんわりしている、とは言えない。でも、それは強がっているだけなのだと、知ることが出来た二ヶ月目のこと。 「のどかだなぁー。」 「のどかだねぇ。」 そのとき、俺は「のどか」って言葉の意味を自分なりに考えた。「のどか」って言うのは、好きな人がいて、心が落ち着くような穏やかな時間のことかな。友達に知られたら、また色ボケしてるとか言われるんだろうか。 「あっ!」 突然、春華が声を上げたので驚いた。 「何だよ、吃驚するから・・・。」 「ごめん、別に驚かすつもりなかったんだけど。」 「で、なに?」 「アレ見て、アレ!」 春華の細い指が指したのは、青い空に真っ直ぐ伸びる飛行機雲。 「飛行機雲!」 「ほんとだ。久しぶりに見たし。」 「なんか、感動薄くない?」 「てか、お前が感動しすぎ!」 青い空を区切るそれは、どこまでも続いていく。 だから、俺たちは言った。 飛行機雲、いつまで続くのかな。 これからもずっと続くよ、絶対。 本気だった。嘘はなかった。あの飛行機雲も、ずっと続くと思ってた。 春華とさよならした。あの飛行機雲はいつ、途切れたのだろう。 -------------------------------- 久しぶりの短編。なのに、失恋物? 私的には失恋モノも良いかなぁ、と。実ったことがないので。笑 東京はもう桜咲いてますね。 書き出した時期が早かったのでちょっと季節ずれてますが。 私の詩サイト時代を知ってるかたは気付いてるかも知れませんが 私の詩の「飛行機雲」のストーリーから作りました。 また感想お待ちしてます。 ←BACK |
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