絶対、好きなんてなるもんか ましゅまろ 嫌いでも好きでもない。そういうもんじゃない? 先輩と後輩の関係なんてさ。 「ねー、次あれ乗ろうよ!」 誰かが指を指して言ったのは大きなジェットコースター。時間は6:00を回っていた。誰が言ったのかは知らないが、夜のジェットコースターなんてよけい怖そう、だって。確かにね。 くじ引きで一緒に乗り合わせる人を決めた。加奈の隣は神埼くんだった。その子はひとつ後輩で、だけど私なんかよりとても大きい。確か、神埼くんと同い年の妹が、「神埼はすっごいモテるんだよ!」と言っていた。だけど、後輩だとそんなの全然気にならない。可愛い後輩じゃんか。 夜なだけに並ぶ列は短く、順番はすぐに回ってきた。ハラハラするけど、こういうのは嫌いではない。素早くジェットコースターに乗り込んだ。 「神埼くん、こういうの緊張しない?なんか怖いよね。」 「・・・」 返事がなかった。おかしいな。聞こえてないはずはないんだけれど。 「神埼くん?」 「僕・・・こういうの嫌いです。」 「はぁ?」 奥歯をガタガタとならしている神埼くんは嫌そうにジェットコースターの安全バーをおろした。ごくりと唾を飲んで。 『それでは、発車致します!いってらっしゃい!』 クルーの人に笑顔で見送られ、ゴトゴトと音を立てジェットコースターは登っていった。呻くような神埼くんの声を最後に聞いて、勢いよく走り出した。これは確か、力学的エネルギーの法則を使っているらしい。光る夜景が川のように流れて、冷たい風が顔に当たる。大声で叫ぶのも気持ちいい。 「あーっ楽しかったね!」 とても満足そうに、みんな声を掛け合っていた。ひとりを除いて。 神埼くんはしかめっ面で上を向いていた。よっぽど怖くて気持ち悪かったんだろう。大きな身長に似合わなくて面白い光景。 「神埼くん、大丈夫?」 声を掛けると気付いたようで、こちらに顔を向けた。 「いや・・・割と大丈夫じゃないです。」 「えぇ、まじで?!どうしよう。」 わたわたと慌てふためく加奈。アドリブは、先輩の加奈より後輩の神埼のほうがバッチリできる。真っ青な顔をしている神埼を見るだけで、どうしようの連発になってしまうのだった。 やっと浮かんだ考えは、キャプテンだった宮部に頼むこと。彼なら何とかしてくれるだろうと思った。 「神埼くん待ってて!宮部ならきっとなんとかしてくれるよ。おーい、宮」 「あの、そんなんしなくて良いですよ。」 「はぁ?」 せっかく何とかしようと思ったのに、自分の好意が気に入られなかったのだと思った。まだ気分は悪そうで、口元を手で押さえている。 「気分悪そうだよ。」 「他の先輩に心配掛けるだけですよ。ここで座ってれば治ります。」 そこまで言うのだったら、神埼くんの言うとおりにしてあげようと思った。ケータイを取り出し、メールを打つ。『神埼くんが気分悪いそうなので、ベンチにいるから遊んでてね。』送信完了を確かめてケータイを鞄の中へ入れる。まだ気分は悪そうだ。 「嫌いなら乗らなかったらよかったのに。」 そう言うと、またしかめっ面をした。 「せっかく来たんだから乗ってみたかったんですよ。」 「あ、そう。」 素っ気なく返事をした。無意識だったけど、神埼は加奈が気付かないようにまたしかめっ面をした。なんなんだ、こいつはとでも言いたそうに。独り言のように、寒い寒いと言う加奈を見て、今度は笑った。 「先輩、海綺麗じゃないですか?」 気付かないうちにベンチから離れ、海が見える柵のところにいた。 確かに綺麗だ。遠くに見える町の光が海に反射している。月の姿は海に映って、ゆらゆらとゆれて。こんなにしっかりと景色を見たのは初めてかも知れない、と加奈は思った。 「わー!ホント綺麗!こんなん初めて見る。」 笑いながら言う加奈。見下ろしていた神埼も笑ってた。おもむろにポケットの中に手を突っ込んだ。 「何してんの?」 「良いもんがあるんです。」 神埼はもうごそごそとするのはやめて、向き合っていた。腕を後ろに隠している。きっと何かを手に持っている。加奈はそれが気になるようだった。 「えっ、いいもんって何?」 「あー、待って下さいよ。まず、目ぇ瞑って下さい。」 はい、瞑ったよ。 笑顔で言う加奈は、神埼の手の中にある物が気になってしかたなかった。どんな珍しい物だろうと、想像を巡らせて。 何かが唇に当たった感触。 柔らかい、と最初に思った。 次に思ったのは、温かいということ。 その次に思ったことは・・・・・ 「ぇ、ええぇぇえぇえぇぇぇえ!?」 「何ですか、大声だして。」 耳を手で塞ぎながら、ちょっと顔をしかめた。神埼くんの顔が少し紅く見えるのは、気のせいかもしれない。というか、そうであって欲しい。 「い・・・今のって、キ、キッ!」 やっとの事で発した言葉は中途半端で終わった。恥ずかしくて言えるわけがない。間抜けな自分も恥ずかしい。いや、でも、まだそうと決まったわけではないし。 その場をひっくり返すような一言。 「先輩マシュマロ好きでしょ?」 にっこりと笑って、手に持っていたのは二つのマシュマロ。もしかして。 「・・・・もー、いいや。」 小さな声で呟いた。それから小さく笑った。 「え、どうしたんですか?」 「何でもない!」 何がなんだか分からないけど、楽しかったのには変わりない。気分は上々で、加奈は走り出した。 「よーし、みんなの所まで競争!」 「えー!!?」 好きなんてならないけど、ちょっと格好良いって思った一日。 これからの頑張りに期待しましょう。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こんにちわ。初めて書きます、年下男。 私苦手なんですよね、後輩ってのが。(全国の年下の方ごめんなさい。) 嫌いじゃないんですよ、苦手なんです。 見てる分には好きですよ。ハイ。 まさか、自分が年下男のことを小説にすると思ってなかったのでかなり新鮮な作品だと思いますが。まぁ、続きは考えているのでもしかしたら、「ましゅまろ 2」とか出るかも知れないですね。 それでは長くなりましたが。不明な点についてはBBSにでもお尋ね頂ければと思います。 感想お待ちしてます! ←BACK |
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