私の目がみえなくなったらどうする?
























こめかみの温度
























今、掌にあるものがあたりまえだと思っている。
それは、私だってあいつだって同じ事だと思う。
だからよけい気になる。
もしも、さ。








「何、じろじろみてんの。」





いぶかしげに言うこいつは、ちょうど半年前から私の彼氏で名前を陸という。名前は陸だが、部活は水泳部で水泳界ではそこそこ名が知れているという。





「落ち着いて、雑誌も読めないじゃんか。」





そんな彼の言うことに返事をしなかった。聞こえているが、返事をしない私にすこし苛立っているようだ。





「なんだよ、美咲。なんか変だぞ。」
「そう?」





変と言われてやっと返事をした。それでも視線は外さなかった。よーく目をこらしてみれば何かが浮かんで見えるかも知れないし、何かを思いつきそうだったから。





「さっきから何を考えてんの。」





こうやって、穏やかに雑誌を読んだり、他愛もない会話をしたり、彼のベットの上で頬杖をついて寝ころんだりしているのは。此処に全ての事を成り立たせる要因が満たされていなければ、有り得ないことであり。
もしも。





「私の目が見えなくなったらどうする?」








少し、静まりかえった。もともと静かだったけどさ。 陸はどんな答えを出すだろう。





「美咲の目が見えなくなったら?」
「うん。」





また沈黙。そして、零れたように響いたのは笑い声。








「じゃあ、俺にもう二つの目でも付けるかな。」








陸らしい答えで、納得したし、それ以上に嬉しくなった。穏やかな空気に喜びと嬉しさと、温かさが加わった。


此処にあるものが当たり前と思ってはいけない。
それは陸も考えていたこと。もしも、私に足が無ければ、陸と同じ学校に通えなかったわけで。もしも、陸に腕がなければ大好きな水泳もここまで上達することはなかったと思う。
例え、この先私の目が見えなくなっても、陸が私の目になってくれる。
陸の耳が聞こえなくなったら、私が陸の耳になる。
お互いがお互いを。








そして、溢れるのは二人で一つの笑い声。













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