このビー玉





太陽の光に当ててみても   君の笑顔が思い出せない
























ビー玉
























「暑いな・・・」


「当たり前じゃん。夏だもん。」











じりじりと照りつける、太陽の光。
この空っぽの箱が、水で満たされていたらどれだけ私たちにとって良いことか。





夏=プール=水泳部。





だけど、その私たちのオアシスも今は只の砂漠だ。
こんなにも暑いのに、足下がヌルヌルしていて、気を抜けばいつでも転けることが出来ます。
ご希望とあらば、いつでもどうぞ。





それにしても、暑い。











「暑い、暑い〜。・・・・太陽のばかっ」


「なんだと〜?! おめ、もう一回言ってみ?」











持っていたタワシを放り投げて、走ってきた。
あ、こんなところで走ったら・・・・











つるん











ほらね。











「い・・・痛ってぇ!!!」





痛かったらしい。そりゃ当然だろう。
此処はプールで、水もなく、私たちは部活を遅刻した罰としてプール掃除をやらせれていたのだから。


滑って転んだ拍子に、はいていたビーチサンダルが大きな弧を描いて飛んでいった。





「太陽、大丈夫?」





転んで仰向けになったままだったので、心配になって顔を覗きに行った。
反応は無い。目は閉じたまま。
もしかして、転んで痛かったんだけれど、打ち所が悪く、後から意識が遠のいていったとか・・・!





「太陽!太陽ってば!」





肩を揺さぶっていると、目を開けてニヤっと笑った。
・・・・・しまった!!!


太陽の肩に触れていた腕を握られ、一瞬のうちに押し倒されたような感じになった。
コイツの父親は柔道の先生なのだ。





「馬鹿はおまえだよ。俺がこのまま伸びるはずがないって。」


「なにすんのよ! 人に見られたらどうすんの!!」





必死の思いで訴えたつもりだった。
だけど、太陽はきょろきょろと辺りを見回すと、嬉しそうな顔で私と向き合った。





「残念でした、此処はプールの中だから、誰にも見えない。」





コイツ・・・・・!
なんて楽しそうなんだろ。少しずつ、太陽の陰が近づいてくる。
背中にまぶしい太陽を置き去りにして。





「やっ・・・・!」





強く瞼を閉じたけど、あった感触は瞼に落ちたキスだけだった。


そっと目を開けると同時に、冷たい感覚が頬から伝わってくる。 ラムネだ。





「太陽?」
「何? あ、コレは南が前に欲しがってたラムネ。」
「それは分かるけど・・・」





そう言って、ラムネと太陽を交互に見比べた。
はじめはそんな事なかったけど、ずっと見ているうちに喉が渇いていることに気が付いた。
ゴクリと、息をのむ。





「あ。 もしかして、南、ちゅーだけじゃもの足りないんだろ?」


「ばか!」





























太陽がはじめてくれた物だった。
だから、まだそのビー玉は置いてある。











だけど、もう君を思い出すことは出来なくて。


ビー玉はもう、傷だらけで。











キラキラした思い出も、いつかはくすんで見えなくなる。


楽しかった日々は、炭酸のように消えてしまったのよ。








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多分中学三年生だと思われますね。
太陽くんって名前、素敵だと思いませんか? 何
実際そんな男の子見たことも聞いたこともありませんがね。
もともとお題小説だったんですが、ビー玉から浮かぶモノがラムネしか無かった私。
















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