今年こそは、好きな人にチョコを渡そう。
























バス停で



























吐く息は白い。
紺色の手袋をはめて、道場の掃除の時間に遅れないように登校してきた。





最近、先輩はちっとも稽古に来なくなった。
二月。
受験まであと1ヶ月も無い。
推薦入試なら、もう終わっているこの時期、希望校めがけて勉強している三年生。





茶深山先輩は、同じ先輩の大前先輩と私学を受けるらしい。
いくら私学とはいえ、勉強しているんだろう。
会えるのは校舎の中、教室の移動中とかにチラリ 程度。
・・・・仕方ないけど。





だから、思い切って今年はチョコレートを作ろうと思った。





沙織はチョコレートなんて作ったことがないのだ。
それでも雑誌を見たりして、友達と作ろうと計画をしていた。





「ねぇ、美月、どんなんがいいと思う?」





ぺらぺらとページをめくりながら、沙織は訊ねた。





「んー、どれでも。」





眠そうに言った。
美月が食べるんじゃないんだけどな、と沙織は思ったけど
お菓子作りが好きな美月に手伝ってもらうのだから、偉そうなことは言えない。





「ねぇ! これは? 『誰でも簡単トリュフ』。」
「いいんじゃない? 簡単って書いてあるし。」
「じゃぁコレにしよー!」














建国記念日の日、美月と一緒に買い物に行った。
楽しかった。
トリュフも美味しくできたし、ラッピングもしっかり出来た。














だけど














「・・・・先輩に会えるんかな。」











部屋にあったカレンダーを見ると、今年のバレンタインデーは土曜日。
チョコを作ったのは11日。
毎日学校に持っていったとしても、二日間しかない。
その間に、先輩に渡すことができるんだろうか。











ここでマイナス思考になんかなれるか!!
そう思って登校した12日。
なんと、いままでさっぱり練習に来なかった先輩がひょっこりと部活に出てきた。
今日しかないと思って、渡しそびれた12日。
だって、先輩、人気者で一人きりにならないんだもん!


















結局、13日に賭けようと思い、寝床に入る。
どうかどうか、渡せますように。

























13日。今日も部活が始まる。





結局、先輩に会うことも出来なかったし 渡せなかった。
クラスの義理の男子には渡したんだけど、先輩に渡せなかったんだったら意味がない。
鞄に入ってるチョコレートを思うと空しい。














「・・・・・こんにちわ。」


「こんちゃーっす!」


道場に入ると、先輩は私の弟と遊んでいるところだった。
どうして、稽古に来てくれたのか。





とにかく、部活一生懸命やった帰りにしようと思った。














人気者の先輩は後輩からとても好かれていて
好いているのは私の弟も同じで、他の一年生だって先輩のこと尊敬してたみたい。
だけど、お願いだから何処かに行ってほしい・・・。





そんなことを思いながらの部活帰り。
同学年の女子と一緒に、歩いて帰っていた。
目の前に居る先輩の背中を見ていたら、隣にいた亜喜にコツかれた。





「沙織!おまえ、先輩に渡さんの??」
「え、だって、いっぱい人居るじゃん。」
「馬鹿だねっ 今渡さないと、もう渡せないよ!!」
「う・・・」





そうだけど、そうだけど、そうだけど。


このまま、見てるだけで終わったっていいと思った。


だけど、それじゃあ、嫌になった。





























思い切りのつかない私は、こうやってバス停の物陰からタイミングを見計らってる。













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