どうして、あの人はあの日に生まれたのだろう。


どうして、あたしはこんなにもちいさいのか。














どうして


どうして
























バス停で



























沙織は、ある時間になると両目の視力を失ってしまう。
だけど、別に見えなくなるわけではない。











その視線が、ある人に釘付けになるから。














3:45


今日も沙織の部活ははじまる。道場にて。





「こんにちはー!」





道場に入るときには、正面に礼をしてから入る事に決まっている。
そして、先輩への挨拶もこのときにするのがセオリーだ。


剣道部の先輩は男子が圧倒的に多い。
そんな中、女子が混ざって練習するようなものだから
女子の先輩はたくましい、と沙織は思っていた。





「うぃーす。」
「こんちわー」






部室から男子の先輩の声が聞こえてきた。
その中に、ある声を見つけ、今日も顔がほころぶ。





今日も来てくれてる。





三年生の夏は終わり。
二学期が始まり落ち着いてきたところだけど、あの先輩はよく部活に来てくれる。
高校でも部活を続けるらしい。
そんな一生懸命なところが、沙織は羨ましくて尊敬できて。











すき。























そう、沙織のすきは恋愛感情。
だってこんなにも痛いものがある。
甘くて、苦くて、不確かで、つかみ所のない、感情。
だって、私の目に映る茶深山先輩は素敵すぎた。











身長148cmにして、180cm以上もある大きな人を相手にし
巧みな駆け引きで勝利をものにする。
そう言ってしまえば格好良すぎな気もするけれど、茶深山先輩はすごい先鋒だった。





私の身長は、146cm。
わずかに先輩の方が大きいくらいで、目線はほとんど同じ。
周りの友達はみんな背が高くて。





わたし、先輩と同じ世界を見てるんだ。





そう思って、嬉しくなった一年生の時。
先輩を目で追うと、私の世界に先輩が映る。





だけど、先輩の世界に私が映った事はあった?











先輩と話す事が苦手だった沙織。
それは、一年生の時にこっぴどく叱られたのが原因。
もっとも悪いのは沙織自身で、それを恨んでなんかいないけど
やっぱり怖いときはある。





だから、茶深山先輩とも滅多に話さない。











「高田!」





茶深山先輩の声がして、振り向く。
だけど、殆どが弟を呼ぶ場合で、私の事を呼ぶことなんてなかった。





「高田!」











あれ??
もしかして、わたし?





「はいっ」
「高田ー、弟になんか言ってやれ。こいつ俺の言うこと覚えないんだわ。」
「えー、僕ちゃんと覚えようとしてますよ!!」
「あほか!してないやんけ!」





そう言って楽しそうに、弟とじゃれあいを始めた。
私はそれを見て笑う。そうすることしか出来ない。












だけど、決して


この気持ちが無くなったりするはずなくて


その約5ヶ月後。





























こうして、チョコレートを持っている。













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