この、コーヒーとミルクみたいに
あたしの気持ちもあいつん中にとけ込んでしまえばいいのに












雨の日の午後 学校近くのカフェにて。











坂口 真夜はそんなことを考えていた。
























雨の日の午後は
























「いらっしゃいませー。お一人ですか?」
「あ、連れが待ってるので。」





聞き慣れた声に、見つめていたコーヒーから目を離し入り口の方に目を向けた。





「待った?」





笑顔でこちらに向かって早足で歩いてくる。
この人があいつ。今村 誠次。





「そんなに。今日、短縮授業だったから割と早かったかも。」
「じゃあ待ったんだ?」





そういうことになるかな。
私は努めて笑顔で言った。
そうやって作られた笑顔に、あいつは気づきもしないで。





「それにしても雨、よく降るなー。見て、ズボンが水浸し。
 歩いてきたんだけどさ、途中で車に水かけられたんだ。あ、俺カフェオレで。」





注文を聞きに来たウェイトレスさんに、あたしに見せたような笑顔を作って答えてた。





誠次と付き合いだして、そろそろ一年が経つ。
学校が違うせいもあって たまにしか会えなくて、会えるときとかはそれはもう嬉しかった。
若かりし頃の思い出ってやつ。
出会いは確かバイト先で、話してみたら優しくて。 幼稚園が一緒だったこととか、いきなり私を誠次に近づけた出来事。











全て全て、宝石みたいに光ってた日々。











「カフェオレお持ちしました」


















その声を聞いて、はっとした。
随分長い時間ぼーっとしてたんだろう。
その間も、誠次は楽しそうに話をしていたのだろうか。








「氷溶けてカフェオレの味、薄くなっちゃうよ?」








誠次が飲もうとしないので、飲むように促した。








「あ、あぁ、そうだな。」








はっとしたような、誠次の返事。
誠次でも考え事するんだなぁ、なんて 付き合い始めて一年近く。
私たちの距離は、宝石のような日々のまま ちっとも前に進まない。
もっとも、その宝石さえ輝きを失い始めているのに、お互い気づかない振りをしているのかも知れない。











気が付いたら、もうカフェオレは飲み終わってた。





あたしのコーヒーは、美味しそうな茶色のまま。
すっかりとけ込んで、そのまま。




「外に出ようか。」























雨はもう降ってなかった。





外は暗くなり始めてて、街灯がちらちらと、無機質な光を放っている。





喫茶店の中が暖かかったから、外の寒さが身にしみた。























ただ、当てもなく歩く。
何処に向かっているのかは、よく分からない。
別に誠次の後ろを歩いているわけじゃないけれど
並んで歩いてても、何となく同じ早さで歩いて、同じ方向に向かう。
空はもう、一色になっていた。
陰は見えない。
街灯もない。
誠次は、ほんとうに隣にいるのだろうか。











「せいじ」











急に不安になって、今までそんなことなかったのに。
只、名前を呼んでみたかった。











「なんだ?」











隣にいるはずの誠次が返事をした。
真っ暗だから、顔も見えない。
だけど誠次は笑っている気がする。
あのいつもの笑顔で。





「寒い」





単なる、自己主張。
ただの主張なら、赤ちゃんだってできる。
あたしは小さな期待を持って、小さな小さな主張をした。











「いいよ」











そう言って、あたしの手を握ってくれた。
真っ暗なのに、あたしの手に一発で触れた。











あぁ、別に失った訳じゃなかった。


世界一愛しい人が、隣にいる。











「うわ、なんだコレ!冷たい手だなぁ。」





そんなに冷たかったのかな。確かに誠次の手に触れたとき、とっても温かかった。





「手が冷たいのは・・・・・心が温かいからだよ。」











苦しかった。
声が震える。
私・・・・・・






「どうしたの?」





きっとびっくりした顔、してるんだろうな。





だけど、今じゃないと伝わらない。
こんな恥ずかしい顔も見られなくてすむ。





握った手を伝って、こんな想い誠次の心に直接届けばいいと思った。 だけど、そんなこときっと無いから。やっぱり、伝えるべき事があるから。





「せいじ。」


「何だってばよ。」


「・・・せいじ・・ごめんね・・」





あぁ、駄目だ。もうすぐ泣く。





「何が・・・」


「誠次がいちばんすき。」











会えない日は、電話してくれたこと。
会える日は、抱きしめてくれたこと。
違う学校だからって、変な虫が付かないようにって、誕生日に指輪をくれたこと。
歩く速さも一緒で、どの道を歩くかも分かっていて。
相手がどうしてるか、目が見えなくても分かるほど、それほど私たちは一緒だった。





一緒過ぎて、分からなくなってた。
だからゴメン。





手が冷たいの。
今、誠次がすきだから、心が温かいから。





「泣いてんの・・・?」





誠次の手が、あたしに触れた。
ずっと流れてた涙を拭いてくれた。





「嬉し泣きだよ。」


「そっか。」











「馬鹿だね。俺の方が、真夜より真夜の事好きなんだよ。知ってた?」


「ばぁか。」











また、輝きだしたんだ。





雨の日の夜。





君の笑顔と、あたしの涙。























もう離すことはないから。
手探りでも、抱きしめているから。
















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なんか終わり方が、あまり納得いきません菜緒です。
ちなみに言っておきますが、季節は冬です。
分かりにくかったら、どうかBBSで教えてください。
出直します。






















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