日差しが強くなってきた。
そんな午後は、たまらなく暑くて、たまらなくだらける。
隣の君は、今日も涼しげだけど。
























   ドーナツ
























「暑い!! やられる〜!」





夏の日の午後の体育、それはあたしが大嫌いなもの。
そして、涼しそうな人は見てて腹立つ。同じ気温の中にいるのに。





「うるさいよ、小春。それに暑くないだろ?」
「そっちこそうるさいよ。あたしの苦しさは、寧明には分からないの」
「あ、そーですか。じゃあ、うちわ二枚持ってるけど貸してやんねぇ」
「ほんとに? ありがとー。助かる」
「・・・・・・・」







半ば強引に貸してもらったうちわは、普通のうちわより風がたくさん吹くような気がして。
それは、持ち主が関係するのかも知れないけれど。






「涼しいだろ?」
「うん。さすが寧明」
「なんだそれ」





涼しげな笑顔が、さわやか少年みたい。
だけどそれも 良いかも知れない。





体育の招集がかかる。
じゃぁね、と短く言葉を交わしたら
貸してもらったうちわは、あたしたちが座っていた場所に置いておいた。 体育が終わったら、うちわを取りに来よう。
そして、君に返すということで、君と話す動機を得た。

















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「寧明」





体育が終わって、汗だく。
まだうちわは持っておきたいんだけど、 寧明の机の前に立って、うちわを持った右手を ぐっ と前に突き出した。





「何? 返してくれるの? 暑そうだけど」





返事の代わりに頷いた。
涼しい笑い声が聞こえる。





「いらない」





他の人が聞いたら、なんか冷たい言葉だとか 思うのかな。
けれど、それは寧明の言葉であって、意味は 「あげるよ」 だと思うんだ。





「勿体ないから、私がもらうよ」





この言葉の意味は 「ありがとう」 だよ。
分かってくれるよね? 寧明

















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私と寧明が一緒にいた時間は、それほど長くはないんだけれど
それだけ濃い時間を、過ごしてるんだ。





だけどソレは、友達であるからであって綺麗事でも、このままで良い なんて言えないよ。











そのときは、HRだった。





「小春、二学期委員会入る?」





先生が、夏休みの生活についてどーたらこーたら話してた。 毎年聞く話に、眠りかけていた。 しばらく頭が働かなかった。





「あ・・・・あぁ、さぁ・・・」
「・・・寝てたっしょ?」
「・・・ちょっとだけ」





あきれた顔した。
そんな目で私を見ないでー!!





「俺さ、保体入りたいんだけど」
「・・・・ふーん」





ピンとくるのが遅かった。
いつも変な言葉でやり取りしてたからかな。





   『小春、委員会入るの?』
   『俺さ、保体入りたいんだけど』





それは、つまり・・・

















駄目だ。期待なんかしたら後で悲しくなる。





「俺と小春で保体委員会入らない?」





でも、期待してしまう。





「・・・・・良いけど、何で?」





求めてしまう。





「だって、俺と小春なら最高の体育祭になると思わない?」





小春くらいしか俺のノリに着いてこれないもんねー。
と、付け足しながら楽しそうに言った。
つまり友達だからって事ね。ハイハイ。 そういうオチがありましたか。





「つーか、小春と一緒じゃないとつまらないもんな」
「ありがとう」
「よし、俺様からの褒美」
そう言って、軽く笑いながらおもむろにシャーペンを取り出した。
黙って見ていると、私の机に落書きを始めた。











「ちょ!・・・・落書きしないでよ」











寧明のシャーペンは、すらすらと何かを描き出す。

















「は?」

















   小春 > ドーナツ











ドーナツ?











『私ね、お菓子の中だったらシュークリームが一番好き』
『何言ってんの?お菓子だったらドーナツが世界一うまい食べ物に決まってんだろ』
『何、そんなにドーナツ好きなの?』
『おー。ソレさえあれば、なんとか生きていけるね。ドーナツが大好き』











どれだけ、君が好きだというものに嫉妬しただろう。











何度、ドーナツになりたいなんて、思った事だろう。











どう解釈したらいいの?











とりあえず、私の気持ちを書いてみた。

















だいすき

















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小春 > ドーナツ
この意味は、ドーナツが大好き。それ以上に、小春がだいすき。
という意味なんですが、なんとなく分かってくれたら、あなたはすごい!
なんか、こういう恋愛がしたいとか思いながら書いてたんですが
ほど遠いんだなぁと思いました。
















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